●○ バーチャンの書評 2006 ○●

 2006年の読書計画はいかがだったでしょうか。何、計画もなかった?いやそんなところでしょうが。年間100冊以上読んでれば、中にはいいものもそこそこ含まれているはずだ、という甘い期待で数字を追っていたのですが、昨年はショートしました。92冊。理由はいくつかあって、続けることが難しいのだと今さらながら思うしだい。
 歳のせいもあって緑内障で読み続けられない、時間も数も押さえてます。
 その代わりポッドキャストを聞いてます、科学番組が面白いなぁ。

バーチャン@馬場 泰

Best10
●トマシーナ ポール・ギャリコ
純文学、猫文学の世界で有名なものだそうで、確かに安心して読んでいられる内容です。子供に読み聞かせるのもいいでしょうが、もう大きいだろうから。
●ゾウを消せ ジム・ステインメイヤー
マジックのネタの話ですが、ネタそのものよりも、そのネタを買って芸に使うマジシャンの生態が面白い。素人マジシャンにはお薦め。
●アイルランド幻想 ピーター・トレメイン
今回やり玉に挙がったのは、UFO、エジソン、反ダーウィン、リフレクソロジー、人食い人種の話、フロイトほか。
●フーコーの振り子 アミール・D・アクゼル
SFの本質はバカ話にあり。日本でもこれだけバカ話ができる作家がいるとは驚きと喜びということになる。
●ロックンロール・ウィドウ カール・ハイアセン
株主総会で社主をやりこめて閑職に追いやられたジャック・タガーが、ロックンローラの死亡記事から殺人事件をあぶり出して第一線に返り咲くまでの物語。
●宇宙を支配する6つの数 マーティン・リース
UFOという妄想が生まれ蔓延する、妄執そのものの生態を正確に調査検証した、記念すべき本。
●世界の日本人ジョーク集 早坂隆
新聞、書評ではなかなかでしたが、実は大したジョークはない。20年、30年前のジョークと変化していない、というところが面白い。
●失敗の心理学 福田和也
日本人は失敗に厳しく、違反に寛大である。そうだ、そのとおり。だから気にくわない。かくて、日本では事故が減らない。
●「失敗学」事件簿 畑村洋太郎
回転ドア「事件」の後日談など、技術者として考えるべき内容、問題を含む、重要な視点です。
●中国的工場カイゼン記 遠藤健治
中国に製造拠点を持っていこうというのが、いかにむちゃくちゃな話か、これを読むとよく分かる。実際、近所でも苦労している人が。

トホホ10
●楠木正成 北方謙三
個人的には趣味じゃなくて。ヒーローは落ちぶれてもヒーローであるべきだと思うのだが、それが大違い。
●サム・ホーソーンの事件簿 エドワード・D・ホック
ホームズは古くてもいいが、これは古いが故に情けない。主人公への思い入れの違い、肩入れできるかどうかの差もあるけれど。
●考えてみれば不思議なこと 池内了
どうやら、寺田寅彦を気取ってみたらしいが、とんだ道化。役者の違いが分からないと、こういう間違いを犯すことになる。
●ファニーマネー ジェイムズ・スウェイン
昔の仲間が犯罪に走った、それを片っ端から殺していくのはやるせない話だと思うが、それを嬉々としてやるとは。このシリーズはこればっかり。
●ナンバ走り 矢野龍彦
高校の教師、それも体育系となると、合理的な思考などできないという証明のような文章、内容で。物理の基本を小学校からやりなおしてほしい。
●騎士の息子 ロビン・ホブ
剣と魔法、中世風、貴族と政略、というのは女子供の手を出せるレベルの遊びではない。トールキンのクラスの学者かそれに匹敵する才能が必要なのに。
●ニューヨークの魔法使い シャンナ・スウェンドソン
うちの娘二人は喜んで読んでおりました、はい。
●パニックの手 ジョナサン・キャロル
非常に平凡な発想と想定のうえにあぶなっかしく乗っかった、平凡な物語。たまたまきわどかった作品が賞を受賞したらしい。
●ブルー・ブラッド デイヴィッド・ハンドラー
あやしい人物たくさん、伏線たくさん、盛りだくさんの推理サスペンス。しかし、合理性ゼロ、必然性皆無、説得力なし。私には推せない。
●2006年の書評トホホ10選 馬場泰
だいぶくたびれた様子、集中力欠如が見える。最近は映画やポッドキャストに嗜好の中心が移る傾向を見せているが、年齢が年齢だけに持ち直すのは難しい。