1970年代にはあまり見かけない珍しい蝶でしたが、雑木林や山林への農薬散布が控えられるようになってから生息数・生息地が増えてきたようです。温暖化の影響もあるものと思われますが、現在では低山地の渓流や林道沿いで最も普通に見られるタテハチョウと言っても良いほどです。九重・阿蘇の高原地帯でも良く見かけます。 越冬後の♀は3月下旬ころ日当たりの良い場所にあるイヌビワの新芽に産卵しますが、2化目以降では日影のイヌビワを選ぶようです。飼育した場合の幼生期(孵化から羽化までの期間)は20日前後と非常に短く、世代を重ねた盛夏には一時に卵から成虫までの全ステージを見ることができます。イヌビワの葉を細長くした形状のホソバイヌビワからも卵や幼虫が見つかりますが、イヌビワとは比較できないほど少数です。 ♂は路上で良く吸水し、♂♀ともに獣糞や動物の死骸で吸汁します。また、各種の白色系の花で吸蜜し、スミナガシと同様に、驚くと羽を開いた状態で葉裏に隠れるという面白い習性を持っています。 |
長崎県長崎市甑岩 1985年8月14日 13時00分 蛹殻に止まる羽化直後の♀ |
福岡県久留米市高良山 1996年7月5日16時10分 ヒメジョオンで吸蜜中の♂ |
福岡県久留米市吉見嶽 1996年6月6日12時40分 路上で吸水中の♂ |
長崎県長崎市岩屋山 1994年8月14日10時45分 林道脇の潅木葉裏に隠れる♀ |
佐賀県鳥栖市河内 1994年9月13日10時40分 イヌビワ新芽に産付された卵 |
福岡県小郡市花立山 2000年6月29日17時30分 イヌビワ葉上の終令幼虫 |
福岡県小郡市花立山 1992年6月22日16時00分 イヌビワ葉裏に下垂した蛹 |