昨年もある程度時間をとりまして、140冊ほどを消化しました。消化不良もあったけれど。今回からはベスト10だけです。少々長いコメント付きで、一部ネタ割れもありますから気をつけてください。なるべく2003年の新しい本を選んだつもりですが、それだけではとてももたないので、本当におもしろいと言える物だけです。 バーチャン@馬場泰 |
●騙す人ダマされる人 | 取違孝昭 | ||
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新潮文庫 | ISBN4-10-142421-7 | |
(1995/08/01) | \514 | ||
古今東西の詐欺、犯罪の紹介の数々。ひたすら人を騙す犯罪に限っていて、ひたすら爽快感がある。 こうした犯罪には、徹底した研究と訓練のうえ決してあきらめず、しつこく成功するまでねばること、しかも深追いせずに1回で手 を切るというのが極意らしい。資料としてもかなりまじめなものがあり、むしろ書名の方がミスマッチ。このふざけた題名をほめている解説は情けない。 |
●よくわかる税法入門 | 三木義一 | ||
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ゆうひかく選書 | ISBN4-641-28055-X | |
(2001/08/20) | \1,900 | ||
税法とその考え方を丁寧に解説した好著。想像以上に問題点を細かく提示して見せ、特に法制上の問題点を明らかに指摘してみせるところは意外なほど。 裁判所、立法府に対して真っ向から対立しているところ、また、考え方の違いとして並立させてみせるところなど、教科書のさらに入門書、という位置づけでも高く評価できる。 |
●太陽黒点 | 山田風太郎 | ||
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廣済堂文庫 | ISBN4-331-60670-8 | |
(1998/07/01) | \1,900 | ||
昭和38年に発表された最後の現代推理もの。 これほど見事な誘導殺人を見てしまうと、クリスティのカーテンなどばかばかしくて問題にならない。時代 性、物語、心理劇等々、どれをとっても見事な作品。中盤を過ぎるとさすがに落ちの見当がついてくるのだが、それはすれた読み方というものだろう。 |
●奇妙な論理I/II | マーティン・ガードナー | ||
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ハヤカワ文庫 | ISBN4-15-050272-2 | |
(2003/01/31,2003/02/28) | \720 | ||
ト学会結成の元になった古典。しかしマーティン・ガードナーがこういう啓
蒙までやっていたとは。紹介されている内容は50年たった今でも変わらない、トンデモ本は進歩しない。 UFO、生物の自然発生、超能力、そして各種の民間療法。そのばかばかしさを丁寧に論破していく著者の偉さがよくわかる。それにしても、50年も昔の話がいまだにまったく変わらず当てはまるというのは、アメリカだけでなく、日本もその昔の欧米と同じようなものだということか。 |
●指輪物語1〜9 | トールキン | ||
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評論社 | ISBN4-566-02362-1 | |
(1992/07/30) | \720 | ||
ご存知の映画の原作。著者が言語学者であることがはっきりわかる。特に歌、詞、詩がえんえんと続くところは日本語にするのが難しかっただろうと思われる。 物語の大きさを理解すると、映画の方の細かいアラが見えてくるが、それは別の問題。 |
●鉤 | ドナルド・ウェストレイク | ||
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文春文庫 | ISBN4-16-766133-0 | |
(2003/05/10) | \762 | ||
ベストセラー作家の名前で売って折半するのと引き替えに小説を渡し、殺人まで。殺人を依頼した側が精神的に追いつめられて、パニック状態になるまで。 いつ捕まるのか、バレるのか、それが心配で最後まで読んでしまう、心理劇のうまさ、それなのにこれが出版界のパロディ小説なのだということが主体だとは。 ウェストレイクのうまさが、斧以上に現れているが、前作とのつながりはない。 |
●タイムクエイク | カート・ヴォネガット | ||
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ハヤカワ文庫 | ISBN4-15-011433-1 | |
(2003/02/15) | \740 | ||
自伝、と断言してもいいのでは。 【デトロイト・フリー・プレス紙評】 「タイムクエイク」は、飾りをとりはらったヴォネガットの中心テーマの展示である−家族と歴史の重要性、宇宙の混沌とした性質、一見無作為な人間社会の残酷さ、人間の生命のはかなさ。それはまた、人生航路の荒波をうまく乗りきるうえでヴォネガットがすすめる必携道具のカタログでもある−ユーモア、正直さ、寛容な精神、そして、存在し、生きつづけるための勇気。 これほどうまく表現できる書評も、そして、思想も、どちらも希有なものだと思う。 |
●仏の教えビーイング・ピース | ティク・ナット・ハン | ||
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中公文庫 | ISBN4-12-205324-4 | |
(1999/11/18) | \552 | ||
ベトナム出身の禅僧が、アメリカ人相手にフランスで英語で講演したものを、日本人がチベットで翻訳した。ということは、仏教の広さを示すものか。 活動する、積極的に社会と関わる、どんな勢力にも与しない、独立して人のためにはたらく、そんな仏教徒。 |
●ヴードゥー・キャデラック | フレッド・ウィラード | ||
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文春文庫 | ISBN4-16-766141-1 | |
(2003/07/10) | \943 | ||
所有者に悪運をもたらすというキャデラックが題名になっているが、内容ははちゃめちゃなクライムノベル。何とかハッピーエンドにたどりついて悪役は一掃されているが、徐々に緊張が高まっていくのが面白い。上出来。 |
●十二の秘密指令 | ブライアン・フリーマントル | ||
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新潮文庫 | ISBN4-10-216525-8 | |
(1990/07/01) | \560 | ||
ル・カレのうっとおしい話とは違って、笑い飛ばせるスパイ物語で大いに結構。 掌編12も、全体構成もみごとなもので、これで連作長編に期待したら、必ずしもうまくはいかないが。 |