【12月】天使墜落 | ラリー・ニーヴン/ジェリー・パーネル/マイクル・フリン 浅井修訳 | |||||
創元SF文庫 | ISBN4-488-65408-8 | (1997/06/27) | \552 | |||
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【11月】裁判の秘密 | 山口宏/副島隆彦 | |||||
宝島社文庫 | ISBN4-7966-1509-1 | (1999/05/10) | \552 | |||
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【10月】抹殺された大東亜戦争 | 勝岡寛次 | |||
明成社 | ISBN44-944219-37-7 | (2005/09/02) | \1,900 | |
今回は表紙写真はやめました。著作権の問題に今頃気づいたのも情けないけど、まじめに載せようとしたらどこかにまじめな断りが必要らしいので。 これまでは、毒になるものは敬遠して薬になるものを、という方針でやってきましたが、今回は「毒」です。まじめに受け取れば「毒」だけど、もうちょっと余裕があれば「トンデモ」か。 アメリカ軍占領下の日本で、占領軍(GHQ)の検閲の元、どれだけの弾圧が行われ、戦前・戦中の思想が隠滅させられてきたが、その結果どれだけ事実が忘れられてきたのか、という調査結果の本です。 大東亜戦争という名称が一切消されてしまったのは、日本の戦争の本質がその名称に現れていて、占領軍としてはその事実を隠すために徹底した検閲を行わなければならなかった、というわけです。新聞はもちろん、あらゆるメディアで消されただけでなく、占領軍批判の名の下に和歌、俳句の類までが消されてきていた。その「消され続けていたという事実」すら忘れられてしまっているのですが。 とここまでは、この本とこの著者と、そして自虐史観を糾弾する人たちの主張です。だから、ここでは事実と主張とを分けて考えるべきでしょう。 当時の日本と当時の欧米とを、その言動という点で比較した時、いかにも大東亜共栄圏を目指すことが正義だということが出てきます。しかし、テキの本音と味方の建前とを比較したら味方が勝つに決まっているわけで、本来は比較にも何もなりゃあしない。これはほんの一部の比較論ですが、出発点からして都合のいい主張だけで完了しているのだから、後は分かるでしょう。 1957年生まれの著者が旧仮名遣いで押し通している事自体、懐古趣味で過去がすべて正しく、現在がすべて間違っているというご苦労さんなものの見方を象徴している証拠でしょう。旧仮名遣いが正しいからすべてそれでなければならない、などというのは丸谷才一氏だけでたくさん。これを史書として評価してほしい、などというのも笑止。 検閲という重い事実を苦労して調べ上げた点については賞賛に値します。しかし、事実とその解釈、主張とが整合しないという面白い例だと想って読まないと、引っ張り回されるだけになってしまいます。その意味で「毒」になりうる、貴重な本だと想います。 |
【9月】ブッダ論理学五つの難問 | 石飛道子 | ||||
講談社新書メチエ 335 | ISBN4-06-258335-6 | (2005/07/10) | \1,500 | ||
何の本だかわからないとは思うのだが、こういうところくらいでしか紹介される可能性がないような本だというのも理由です。仏教と論理学と歴史と宗教への関心と、そして好奇心がないと、この本に近づく機会などないだろう。ここのところ一般向け小説、お話を出してきたつもり。今回は小生の趣味が強く現れたもので、しかも新しい本ということです。買うかどうかは疑問だけれど。 著者は古代インド哲学の研究者で、ブッダの時代前後を専門としているようです。決して宗教学者ではない。だからこそ、数々の仏典に依っているものの、その宗教的な面ではなく、あくまでも論理学や論争、ディベート(に相当するもの)、証明という点からとらえているのです。思い起こせば、論理学なんて、大学の教養部時代にちょっとやったかな、きっと。でも、数学の世界でも同じだし、アルゴリズム、数値計算の世界でも同じなのです。最近この手の厳密な証明(論)について考えたのは、クヌースの著作くらいですが。 さて、かんじんな五つの難問:
いかにも難問ですが、これについてブッダ自身がどう対処していたか、少なくともその直系の後継者がどう考えて、何を著作に残していたかを解読、解説してくれています。もとも、ブッダの時代に「西洋論理学」も何もないのですが。 そして、読んでみてどうかと言うと、問題も多い。気宇壮大にして独りよがり、しかしその気宇壮大なところが大いに楽しい。倫理と論理は表裏の関係にあると、そう言われれば初めてそういう見方ができる。これまで分けて考えていたこと自体が問題だと分かるわけです。 こうして考えれば考えるほど、仏教という宗教の存在は、他の宗教とはわけが違うとわかりますな。だとすれば、真理の存在と神の存在とが別のものだという証拠でもあるような気がしております。 |
【8月】三人の怒れる妻たち | オリヴィア・ゴールドスミス 安藤由紀子訳 |
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扶桑社セレクト | ISBN4-594-04159-0 | (2003/10/30) | \930 | ||
うたい文句はこのすごさ!
妻を食い物にする男は同情に値しないのだが、それにしてもやりすぎじゃないか。男どもやったこともひどいには違いないが、やり返す方もそれなりにひどいものだ。無知が罪だというのはそのとおりで、加害者意識がないのはただそれだけの理由で有罪ではあるのだが。ネタバレになるけれど、接着剤だけは勘弁してくれ。 さて、同じ著者には「ファーストワイフクラブ」という前作があります。これは映画化されていて結構面白かった。出ていた面々が、 この最初のネタは、金で復讐する話。今回は暴力と破壊で復讐。次回はさらにエスカレートするらしいから恐ろしい。これは誇張ではなくて、この恐ろしさ、耐えられるか、というほど。 |
【7月】イギリス発 日本人が知らないニッポン | 緑ゆうこ | ||||
岩波アクティブ新書 121 | ISBN4-00-700121-9 | (2004/08/04) | \780 | ||
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今回はイギリス本です。 ■これでもイギリスが好きですか? 林信吾 ■イギリス式仕事と人生の絶妙な知恵 渡辺幸一 そして、本命はこちら。「教科書で紹介される日本」といった例もあるけれど、この本はマスコミに出てくるものを集めた結果だとか。 ■イギリス発 日本人が知らないニッポン 緑ゆうこ イギリスのたちの悪さ、というよりも、無知蒙昧ぶりがよく分かる。 以下は歴史のおさらいです。こんなことは教わった覚えはないかもしれないが。この本に出てくるわけではないけれど、基礎知識として。 イギリスという王国で世界を見ると、こんな風に見えるのでしょうが、実態や如何に。(以下は正確でないところがあります。ま、たんなる戯画ですな。) |
【6月】軍事のイロハ | 別宮暖朗 | ||||
並木書房 | ISBN4-89063-179-8 | (2004/11/25) | \1,800 | ||
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論旨はきわめて明快。国家は国民の利益を目的に存在しているのであり、政府や軍が国家の利益にならない戦争を選択することはありえない。戦争は、敗者にとって悲惨なだけでなく、勝者にとっても利益より損失の方が大きい。共産主義、独裁者のみが、国策として戦争を推進する。戦争の歴史を正確に解釈したうえで、これを事実からの結論としている。たいへんわかりやすく、しかも納得できる説明である。あまりにも極端に整然として攻撃的であるがゆえに、おそらくは半分は間違っているに違いないとすら思わせる、その点が難点であろう。だから、怪しいところを探してしまった。 問題は、国家の利益を合理的に考えるはずの政治家と軍人、特に政治家の方が、それほどまでに理性的で道徳的であるかという点である。自らの利益を国家の利益、国民の利益に優先する連中がいるのが明らかであり、そうした政府が戦争の得失を評価した時に正しい結論に至るとはとても思えない。コイズミが政治を単なる自民党政党内の勢力争いの道具に使って恥じないように(キョン2ならいいのに)、ブッシュジュニアがテキサスの一党の利益を優先させるだけのための理由付けに飽きないように(ブラジルにも黒人いますか、と聞くようなオッサンだ)、独裁者と変わらない不合理な政治が進められている以上、その国が戦争または戦争以上に悪い状態におちいるのも不思議ではない。たとえばベトナム戦争の利益を享受した代表はヘリコプターのメーカーであり、中東の戦争の利益で笑いが止まらないのは石油を扱う企業が筆頭だろう。石油を掘り出す側も、使う側も利益はないのに。戦争と軍隊を維持するためのコスト、補填のコストは膨れ上がる一方で、軍隊を無駄には消耗させられない。正確な軍事情報を得るためにはさらに高いコストが必要になるので、そのコストを惜しむあまり、不正確な情報、情報の誤差の評価がないがしろにされて、無駄な破壊が進む。たとえば、ピンポイント攻撃をニンテンドー戦争で行うための基本情報は衛星写真じゃ無理で、現地に潜り込んだ007かローカル情報が必要なんだが、それがどこまで信用できるだろう。こうしてようやく、一般人の被害、軍隊以外の被害の方が大きくなる時代になったのだ。 最新の条件を考えると、その主張の前提が変わりつつある、変わってしまっているかもしれないが、特に過去の戦争を理解、評価するためには、この本にある知識は必須のものである。政治学、地理学、歴史学、科学史、その他の広い分野にわたって、戦争の意味と回避を考えるための教育が必要だっただろうに。日本では戦争に関する情報が偏っていると言わざるをえない。正攻法で考えるためには、この本のような基礎知識が必要である。ゴーマンかました右翼思想かぶれの本を読むより、この本の方がよほど大事だし正確だ。実は、小林ノーテンキ本はちゃんと読んだことがないんだけどね。どうせ読むのなら、こちらの方を推薦します。 |
【5月】人類はなぜUFOと遭遇するのか | カーティス・ピーブルズ 皆神龍太郎訳 |
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文春文庫 | ISBN4-16-765125-4 | (2002/07/10) | \952 | |
UFOという妄想が生まれ蔓延する、妄執そのものの生態を正確に調査検証した、記念すべき本。 この本を読んでそりゃそうだと思うのは、直接一次資料に当たって検討するという基本的な態度そのもの。それがなければ、何かを調べたとか研究したとか言う資格などない。たとえばだよ、誰かの伝記を書こうっていう時には、その生誕の事実を確認することから始めるべきであって、誰かが先に書いた本を並べかえるというのは意味がない。UFOをはじめとする超常現象については、その一次資料の検討がなされた例なんて、この本以外ではなさそうだからねぇ。 さて、一次資料を調べたとしてもさらにその裏付けをとるためには、独立した二つ以上の情報源にあたることになる。たとえばの話、「サンケイ新聞」と「諸君!」に出ていたからと言って、複数のリソースだとはいいにくいわけだ。政府発表と日銀の数字と日経の記事が一致していたからと言って、客観的に証明したとは言えない。出どこは小役人の鉛筆1本だろう。 信じてても信じてなくても、懐疑派でも敬遠派でも、読んだ方がいい。 |
【4月】逃げる悪女 | ジェフ・アボット 吉澤康子 訳 |
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ハヤカワ文庫HM | ISBN4-15-174553-X | (2005/01/15) | \940 | |
さて物語は、子供の頃に自分を捨てた母親を捜し出したはいいが、その母親はギャングの金庫番になっていたという大騒ぎ。しかも麻薬取引にからんで危険な連中が次から次に。果たして金を盗んだのは誰だ、という謎解きも含めて読ませるものです。 月に2回ほど図書館に行って本を探すのですが、そのときに気になるのはシリーズものなのに最初の方の1、2冊だけが抜けているもの。途中から読み始めるのがどうにも気になって、結局借りられない。たいがいは、いくら待ってもその欠落の本は戻ってくることもなく、読むチャンスなどこないのです。こうして、数々の有名シリーズに手を出せないままで終わってしまう。全部自分でそろえるくらいしか対処の方法はないけどね。 さて、今年の読書計画はいかが、いや進捗はいかが。当方、この4ヶ月で50冊以上は読んでます。1日で読めるような新書、文庫が多かったけど。連休ってのは本は読まないねぇ。ぼんやりして過ごしたい、長い時間がとれるから、長い映画を見たいもんで。たくさんこなすこつはないけど、何時読んでいたかというと、通勤時間と、勤務先での昼休みというところ。出張の移動時間という場合もあるけど、出張で長いと寝てしまうので。後は読み飛ばし。50冊あったとしても、読み飛ばしで十分という本もけっこうあるもんです。実は今回の本も500頁以上あるけど何日もかけていない。速読ではなく、話を「ヨむ」んですなぁ。 |
【3月】技術と人間の倫理 | 加藤尚武 | |||||
NHK出版 | ISBN4-14-084023-4 | (1996/01/20) | \1,068 | |||
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********************************** 主張の中心は、無邪気な科学礼賛と狂信的な科学排除との両者に対する批判。しかし、まともな議論なら極論の間にしか存在し得ないことはあたりまえで、ここで急に偉そうに両方をバカ扱いしてもしかたあるまい。盲目的な信仰は、その対象が宗教と神だろうと、科学と技術だろうと、何だろうとほとんど意味をなさないのだから。
これだけの内容をまじめに読むと疲れるよぉ |
【2月】浮かれ三亀松 | 吉川潮 | |||
新潮文庫 | ISBN4-10-137624-7 | (2003/08/01) | \629 | |
柳家三亀松の伝記 昔の典型的な芸人の一生で、ほとんど信じがたいほどの神経をしているというのが分かる。 昭和30年代から40年代にかけて、ラジオを聴いていたとは言っても、自作ラジオで短波の国際放送ばかり。都々逸がどうしたなんて聞いたこともなかった。 |
【1月】ナンバの効用 | 小森君美 | |||||||||||||||
徳間文庫 | ISBN4-19-892118-0 | (2004/09/15) | \571 | |||||||||||||
まずはテスト。壁の前に、つま先がつくように立ちます。そのままひざを曲げて体をさげていって、壁にはりつくようにしゃがめますか。やる前に注意。寄りかかれるような壁であること。障子や襖では危険。体の後を片づけて、クッションなど置いておけば安全。 ナンバも一般化して、この著者も少年チームを「ナンバで躍進させた」として有名です。ナンバは右手と右足が同時に出る歩き方、と思ったらそれは甘い。歩き方に見られる体の「さばき方」と考えるのがよさそうです。 50キロを平気で歩く剛の者、諸姉諸兄にあっては今さら歩き方の指南でもないのは承知。何と言っても、本を読んでそれを伝授するだけは愚。本を読むのは自分で考えるためです。ここでナンバついでに歩き方の考え方の一つを。
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